「情報の呼吸法」を読んで、そんで自分のことを考える

津田大介著「情報の呼吸法」を読みました。

情報の呼吸法 (アイデアインク)

情報の呼吸法 (アイデアインク)

165ページ、一気に読めました。この本を読んでみたいと思う人の多くにとって、理解しづらいと引っかかってしまうようなところはないんじゃないかしらと勝手に想像してしまうぐらい、平易で優しさのある文章でした。10年近く前から津田さんのファンをやってる俺にとっては、素直に頷きながら、「こういうところが嫌だなぁ、自分の考えと違うなぁ」という部分が数箇所しかない感じで気分よく読み終えることができました。本のちょうど真ん中あたりで出てくる「人生で大切なことは、全部エゴサーチで学んだという感じですね」という文章を読んで、本当に津田さんらしいなと思いました。「〜感じですね」と締めて濁しているから許されますが、本来なら「ご両親に謝りなさいよ」って言っちゃうところです。他から学んだ大切なことたくさんあると思いますよ。
本の内容は一言で書けば「情報の呼吸法」ではなくて「津田大介の作り方」というように読み取りました。津田さんのように誰にも似たくない・どこにも属さないのフリーなスタンスで、端末の前で情報のインプットアウトプットに向き合って、たくさんの情報とコミュニケーションをとりながら、それによって飯を食って行きたいと思ってる人には、とても参考になるのではないでしょうか。また、津田さんはやっぱり一貫して「ジャーナリスト」としか呼びようがないようにも思いました。いつもとても中立な立場で、時にはこちらが「無神経ギリギリのラインだな」と心配になっちゃうぐらいの図太さで、みんなだまされがちだけどこういう方法もある、こうやれば偏った損得なしでうまくやれる、という情報を発信してきた人です。そんな人に私はなりたい、と思ってる人にとってはまさに教科書だと思いました。
本の内容と自分とを比較して見ると、同意できるところがたくさんあるのにもかかわらず情報の扱い方には大きな隔たりがあるのがわかりました。それこそ社畜なんて呼ばれ方をしてもおかしくないぐらい会社都合に準じてサラリーマンをやっている俺にとっては、twitterなんて通勤中の電車の中でチラ見する以上に時間取れないし、「有益な情報を発信することで自分にも有益な情報が返ってくる」みたいな態度でツイートすることはないし、日々の自分の業務に関わる人以外とtwitterで出会って自分の幅を広げたい……みたいなことってなかなか、いや全く考えられないし、というのが現実ですから。自分の仕事を終わらせてできることなら定時に近い時間に帰ろうと頑張るのがやっと、明日の自分の為にプラスアルファで、ぐっと堪えて言われてないけどやった方が自分がもっと面白がれると思える仕事をほんの少しでもやって帰る……みたいなことが精一杯です。パソコンにいつもtwitterクライアントを立ち上げて、フローしていく情報一つ一つに入り込むわけでもなくぼんやり眺めていて、その中にキラリと光る自分にとっての有益な何かと出会える環境を整えておくなんて無理。フローではなくストックされたものをGoogle検索して、一刻も早く、まとまった有益な情報を手に入れようとやっきになるばかりです(そんな時に毎日コミュニケーションズ刊の「ググる」という本のテクニックはたいへん役に立ちます)。「この件は本日スタートだけど、エンドユーザーの反応はどうだろう」と思ったら真っ先にtwitter検索を行ないますが、それ以外では仕事でtwitterと付き合うのは難しいというのが、サラリーマンをやっている自分の正直な感想です。そして「仕事以外で」としてしまったら、もう後は本当に、自分の趣味に関わる同好の士のつぶやきを見てにんまり楽しむ、ぐらいのものなんです。
この本による「津田大介の作り方」を読んで、大好きな津田さんになりたいかと言うと、やっぱりそうでもないな、と思うんですよね。同じ生き方をしたいわけじゃない。俺は会社に属して、15年以上もプロパーで働いてもペーペーで、正直俺以外の誰であっても間違いなく替えの利く仕事しかしてこなかったかもしれないけど、価値がなかったわけでもない、と信じてる。そりゃあ自分では「自分じゃなきゃダメだから頑張るんだ」と思って頑張ってるわけですが、実際には会社にとっては絶対そんなことないってわかってて、文字通り歯車なわけですけれども、全然恥ずかしいと思わないし、むしろ俺の方が正しいんだって自信もあります。「○○は俺がやった」って言って他人にわかってもらえるものがなかったとしても恥じることは何もない。そんな俺なので情報との付き合い方についても、この「情報の呼吸法」に載っている考え方はたくさん納得できるものだけれども、真似するかって言ったらしないなぁというのが俺の感想でした。
そんで今後の俺が今後もやっていきたいと思っていることは、じゃあこの本で書かれていることと正反対かというかとそこまででもなくて、「ソーシャルキャピタルとかウッフィーとかって言葉に惑わされ過ぎず、インターネット経由に関わらず、自分の身の丈・手が届く範囲内の人たちに信頼してもらって、『実験40号と仲間でいるのは悪くない』と思ってもらえるような発言を、ちゃんと考えてひとつひとつ発していきたい」ってことです。もうひとつもう少し具体的に言えば、更新頻度も下がっちゃったこのブログも含めて、誰かが何かの情報を求めてGoogle検索して、俺のエントリにぶつかった時に「ふーん(辿り着いた文章はゴミじゃなかった)」って思ってもらえる文章を、年間に何本でもいいからストックしていきたいな、ということです。
俺にとっての心地よいスピードで、情報を発信すること(インターネット上に自分の発したもののログを積み上げていくこと)を楽しんで行きたいと思っています。フローして消えちゃう情報ってのはネットラジオで発散するってのもいいですね!