ムシの話

子供の頃、昆虫って格好良かったと思うんです。俺も昆虫大好きでした。

幼稚園の頃、先生が園児たちに向かって「好きなムシの名前をひとりひとつずつ言っていこう」ってお題を出した時は考えましたよ。やっぱり格好いい昆虫の名前を言いたい。でもクワガタムシやカブトムシはすぐに誰かが自分より先に挙げてしまう。その時幼少の俺が照準セットしたのはカマキリでした。両手が武器(鎌)になっているなんて超かっこいい! しかもカブトムシとかよりもシャープでスピーディーな、暗殺者っぽい印象。カマキリに決めた! 皆が順に発表していって、先生が「それはさっき○○ちゃんが言ったね〜、他には?」とか相槌を打ったりして、いよいよ俺の番となった時! 俺は盛大に噛んだ! 噛んで俺は「カ、カミキリ!」と言ってしまった! 当時俺はカミキリムシを知りませんでした。先生が何事もなかったように「カミキリね〜、じゃあ次○○くん」とスルーした時はあっけにとられたものです。

子供の頃は昆虫大好きだったのに……年を取るごとにムシ全般が苦手になっていった俺。今ではもう、どんなムシも全般的に苦手で(若い人たちの言葉を借りれば「ムリ」で)、ペットショップで売ってる大量のコオロギを見て卒倒しそうになるありさま。ガクブルです。

特に家庭に現れる、Gで始まるあのムシ……GKBRは、本当に心から苦手なんです……。40男ですが、こんな男だって居ますよね……そんなに珍しくないですよね……。

ある日twitterで、友人がこんな有益っぽい情報をつぶやいているのを見たんです。
「冬の最も寒い日に窓を開け、換気扇を回して3時間、できれば一晩中放置するだけでゴキブリは発生しなくなる。理由は寒さでゴキブリの卵が死滅するから。ゴキブリはダメになった卵を見るとここに住むと死ぬと判断して他に行く」
本当に? 本当にそんなに簡単なの? たしかに寒い土地にはゴキブリは居ないという噂。しかも奴等の知能は異常に高いみたいな話も聞くので「ここには住むべきではないと判断する」ってのもなんだかありえそう。信じちゃっても……いいのかも?

だったらこの冬、試してみるか。寒くする為には全ての電化製品の電源を落とすと良いだろう。窓を開けたままどっかに出かけて帰ってきたらそこは安全地帯。……いや、高層マンションでもあるまいし、窓開けて出かけたら防犯面に不安があるか。では窓を開けて一晩中寒い部屋で過ごすか。部屋の真ん中に寝袋にくるまって。……待てよ? もしもその寒さに気づいた台所のゴキブリが、暖かい場所を求めて俺の寝袋に寄って来たらどうしよう……。

そんなことを考えてるうちにふと気が付く。「寒さで死んだゴキブリの卵」がもしも売られていたら、それ買ってきて部屋に置くだけで寄り付かなくなるってこと? 本当に? そんな簡単に? ……なんだか信じられない。やっぱりこの噂、マユツバモノなのかもしれない。だめか……。

暖かくなったらまたGKBRの季節がやってくる。今年もいろんな対策品を購入して、震えながら迎え撃つしかない。でも本当に怖い。ガクブルですよガクブル。今年もまた、GKBRにGKBR状態です。