子供の頃書いた絵

絵というか、当時は「イラスト」なんつってたわけだけど、要は落書きね。でもそれは誰かと電話をしながら手慰みで描いてた落書きとも、退屈な授業中に教科書の余白に描いてた落書きとも違う、俺が子供だった当時はそれこそ「作品」のつもりで描いてた頃の落書きの話ね。中綴じの、ジャポニカっぽい帳面だが罫線の入っていない、その名も「らくがき帳」なんて商品名の市販のノートブックが昔の荷物から掘り出されてしまって、子供の頃の自分の描いた落書きが多数発掘されてしまう時、あるじゃないですか。そんな時の話。
画力が稚拙なのは、許せる。当時好きだった作品や作者に画風を似せようとしちゃってるのも、まあ仕方がない。それらを何とか許容したとしても。


絵の横に、自分の書いた文字があると、つらい。その字が。文が。


居心地が悪いなんてもんじゃない。恥ずかしくて、身じろぎして、血涙がほとばしり、低い声で唸った後、帳面を閉じて頭を抱えてしまうほど、恥ずかしい。
描かれたキャラクターが発したとされる吹き出しのセリフとか。描かれたものにつけられたタイトルとか、キャッチコピーとか。その気になったつもりの、洒落たつもりの。
文字になると、文章になるとどうしてこんなに恥ずかしいんだろう? 稚拙な絵単体だったらいくらでも許せるのに、そこに文章を添えやがった当時の自分が許せない。ぶん殴ってやりたい。お前、何調子に乗ってんの? 「上手く描けたぜ」みたいな悦に入った感じがビンビンで、当時の自分のちょびついた高揚感が全開で、薄ら寒くて泣きたくなる。お前バカか、と言いたくなる。当時の「○○をテーマにちょっと描いてみよう」みたいな自分の思いつきを記憶が浮かんでしまうと尚更。マジ寒いわ。


横に書き文字のある落書きは鬼門だ。恥ずかしくて恥ずかしくて、正視せずに焼き捨てたい。


でもできない。