もしも君に逢えずにいたら/近藤正臣

母親が若い頃近藤正臣のファンで、自宅には彼のLPレコード『もしも君に逢えずにいたら』があった。うちにあるレコードはそれほどたくさんではなかったので、俺もなぜかそのレコードをくり返し聴いていた。むしろ母親より聴いていたように思う。タイトル曲がB面のラストに収録されていて、たしか曲というよりは語りだった。セリフの内容に反した暗い声の「もしも、君に、逢えずにいたら……」というつぶやきで締めていた。というか、曲と曲の間には毎回語りが入っていたような気もする。また、サビで「あいかわ〜らず〜♪」と歌う「相変らず」という曲があった。公園のブランコだか砂場だかがどうこうという詞の曲もあったように思う。先日母親にその話をしたら全く覚えていなかった。もしかしたら自分が記憶を捏造したのではないかと不安になって検索してみたら、あまり見つからないものの情報は存在していた。
近藤正臣は最近見かけないが現役で役者をしているらしい。若い人たちにとってはタンスにゴンのコマーシャルくらいしか記憶にないかもしれないが、新幹線の騒音公害に対抗する映画「動脈列島」は迫真の演技で物凄く格好よかったように思う。テレビ朝日の夕方枠で年1回くらい放映されているのを何度も観たような記憶がある。
俺がもしも近藤正臣に逢えずにいたら……今の俺みたいにこんな風に前髪を伸ばす男にはなっていなかったかもしれない。