自称プロサーファー

俺が最初に思ったのは「自称プロサーファー」って何で食べてるんだろう、ってことでした。皆さん、どう思いました? 最初から「親のスネでもかじってるんだろう」「ヒモみたいなやつに決まってる」みたいに収入について思いを馳せましたか? 自称プロサーファーならきっとサーフィンが上手なんだろうと思ったんです。だって超有名人の旦那がプロサーファーなんて名乗ってたら、サーフィン好きの人たちが集まってきそうなもんじゃないですか。ちょっと突っ込んだサーフィンの話になった時に、彼はのらりくらりかわしていたのでしょうか。バレちゃうじゃないですか。バレちゃっても平気なくらいハートの強い人もいますけど。

だから俺は、たぶん彼はサーフィンに関しては、プロ並かどうかは知りませんが上手なんだろうと思ったんです。きっとインストラクターでもやってたんじゃないかな、と。スクールの講師ってことになればプロであることを証明しなけりゃならないだろうから、個人レッスンかなと。サーフィンの上手な人、しかも超有名人の旦那ってことになれば、個人レッスンで1日2〜3万円くらいは稼げそうな気もしたんですね。だったら自称プロサーファーでも十分に成立するな、と思ってました。

彼の話(時事的な部分)はここで終わりです。

自称プロサーファーの人が個人レッスンでサーフィンを教えて、生徒さんがサーフィンがうまくなってお金を払って、実際にはプロの資格がなくて生徒さんをだましているわけですけど、それってどのくらい悪いことなんだろうと思ったんです。自分の生活に置き換えてみて……たとえば髪を切ってくれるお気に入りの美容師さんが資格を持ってない人だったら、タクシーの運転手がもしも免許証を取り上げられてる人だったら、お好み焼きの屋台の親父が調理師免許を持っていなかったら……。別にかまわないな、って気がしたんですよね。「知ってて金払ったなら客である俺も悪くなる」ってんならちょっと脅えますけど、そうでないならいい仕事してくれりゃかまわないな、って気がしたんです。そういうのが蔓延して業界自体がダメになっちゃうっていう壮大な問題の根源だって言われたら言い返せないですけど、点で考えたら別にかまわねーな、って。

山深い過疎村の小さな学校で、何十年も休まずに授業を担当してくれた、熱心に教育にぶつかり、家族同様に親身に生徒を愛してくれた、あの優しいおじいちゃん先生が教員免許を持っていなかったら、あなたはその先生を嘘つき呼ばわりしてなじりますか──的なアレですよ。アレなナニです。

結局は怒りの根源は「そいつがイイ仕事してくれたか否か」って部分で、そこのバランスの問題だなぁと思ったわけです。資格持ってない事実という罪と、自分が獲得したメリット(あるいは自分が受けた喜びや感動)と比較してどうだったか。1対1の人間関係に行き着くなぁと思ったわけです。

だから自称プロサーファーの自称の部分を取り沙汰して、悪いだの迷惑だの言っていいのは当事者、サーフィンを愛してる人たちだけのような気がします。ルール違反のやつ見つけて、大勢の尻馬に乗ってやいのやいの言うのも楽しいかもしれないけども、素直な気持ちに自分に立場に置き換えてみたら、資格持ってようがなんだろうが別にいいじゃんって気になりませんかっていう、そういう話です。

彼が実際にはサーフィンできないのにプロを名乗ってたのだとしたら尚更です。