見てるものの奥にいつもうっすらリリー・フランキーがいた

見てるものの奥にいつもうっすらリリー・フランキーがいました。

最初に感じたのはコラムでした。若い頃J-POPやアイドル歌謡曲しか聴かない俺でしたが、最も仲の良かった友人はグランジやらブリットポップやらを愛聴していました。インターネット遊びがなかった当時は主な情報源のひとつがロック雑誌で、彼らが好んで読んでいた雑誌が「CROSS BEAT」でした。リリー・フランキーはそこでコラムを書いていました。友人はインタビュー記事に関して話題にすることはほとんどありませんでしたが、コラムで笑った話はよくしていました。

次に感じたのはコラムをまとめた書籍でした。当時つきあっていた恋人がリリー・フランキーが大好きで、コラム本が出るたびに購入しているようでした。面白いからと貸してよこしてきたので俺も何冊か読みました。部屋に戻ったら見知らぬ気違いがベッドの上でぴょんぴょん飛んでいて、話しかけると開口一番「俺、感動してんだぁ!」と答えたというエピソードを記憶しています。

その後、過渡的にいろんな場所でリリー・フランキーの名前を見るようになりました。コラムニストかと思っていたら多才な人のようで、本当にあちこちで名前を見ました。結婚して奥さんが持ってきた本のうち一冊が「東京タワー~」でした。残念ながら俺は未だに読んだことがなく映画も観ていません。俺が買い集めているCDのうち一枚は、安めぐみとのユニット、リリメグの「おやすみ」でした。女優の歌うアイドルソングが好きなのですがこの曲の印象はあまりありません。

「俺の見る景色の向こう側にいる!」と決定的に感じたのは、つんく♂の上京のツテがリリー・フランキーだったと知った時でした。東京に来た時のつんく♂リリー・フランキーしか拠り所がなかった! 自分の肉体の何割かはつんく♂の創る音楽でできていると断言する俺にとって、裏にリリー・フランキーが居たと知ったのは衝撃でした。シャ乱Qのアルバムジャケットを担当した程度だと思っていたからです。

その後も、俺の好きなものの裏にうっすらリリー・フランキーがいると感じることは多数ありました。リリー・フランキー吉田豪指原莉乃ハロプロやそのほかについて語るテレビ番組「真夜中」は印象深く観ていました。トークの内容は全然覚えてないんですが、ハロプロのこと知ってそうで知らない、知らなさそうでハズしたことを言わない感じが絶妙だったのは覚えています。「真夜中」という番組はその回しか観ていないんですが、タイトルからスタッフロールまで、リリー・フランキーの縦書きの手書きで、とても達筆なだけでなく俺の好きなタイプの筆跡だったもので、あの字ばかりが強く頭に残っています。

映画「モテキ」でタクヤさん役をやったのもリリー・フランキーでしたっけ。すごいなあの人。なんかすごい。映画は観てなくてすみません。

俺の好きなアイドル、アンジュルムのメンバー竹内朱莉さんは「おでんくん」と呼ばれています。そう、リリー・フランキーのキャラクターです。

これまでずっとなんやかんや距離を保ってここまで来てしまったので、今さら彼の作品に近づくことに気後れしていたのですが、映画「凶悪」という作品が素晴らしいということだったので、ならばそれは観なくちゃな……と思っていたところにピエール瀧の逮捕がありました。もの凄くびっくりした。そしてネットで見掛けたゴシップ記事に「次に捕まるのはサブカルの大物」というのを読んで、勝手にこれはリリー・フランキーのことなのだなと決め付けて、逮捕された後にこのブログを書くのも馬鹿みたいだと思うので、それで今これを書いています。宮藤官九郎かもしれないけど。

つんく♂のツテがリリー・フランキーだって知って、尖ったところある、ぐらいのコラムニストかと思ってたら全然違った、才能と人脈のもの凄い人だったんだと知って、それからずっと妄想を膨らませている俺です。

芸能界というのは……テレビや映画だけでなく、そこに関わるステージや文筆関連まですべて含めて……人脈ありきのものなのだなぁとしみじみ想像しています。それこそ「六本木野獣会」みたいな、それこそサロン的な、特定な場所自体は存在しなくても、プロダクション的な括りでなかったとしても、全体に影響する人脈、ネットワーク的なものが存在するんだなあ、と。例えば武井壮とかはるな愛とか、テレビの人気者になるずっと前から芸能界のビッグネーム達と古くからずっと懇意にしてたんですよね。テレビの有名人になる前から継続的に仲良くしていて、脚光が当たるのを順番待ちしていた印象。もちろん、同じように人脈の中にいても最後まで脚光が回ってこない人も居るんでしょうけど、一度認知されてしまえばテレビの画面から消え去ることはない。だって人脈の中の人なのですから。

前に「R-1ぐらんぷりで優勝しても、それがコンビの片割れでなく生粋のピン芸人だった場合、テレビにはあまり出て来ない。なぜなら生粋のピン芸人は人脈に属するのが苦手でコンビすら組まない人たちだから」と書いたことがあります。あれも同じ。AKB総選挙で順位が高いわけでもないのにずっとテレビに出てる峯岸みなみとか。あれも同じだと思う。

じゃあその人脈に入るために何が必要かといえば、言ってしまえば「才能」なんですけど、それは何かの分野で突出してるというよりはバランスによる魅力なんだろうなと思います。平均と比較したら抜群の頭の良さ、勘の良さを持っていて、自分の役割を知っていること。タイミングを間違えないこと。そして、人脈に対して強い誠意があること……などでしょうか。もちろん一般人と比べたら格段に高い才能なんですが、知識量とか発想力とか、なんらか定量的に評価しやすい力とは別の、その人個人の持つ才能、魅力みたいなものがあるんだと思います。……どこまで言っても俺の考える勝手な妄想ですが。

この人脈の中に居て誠実に努力をしていれば、それこそチャンスも、食いっぱぐれない仕事も、あるいは非合法側の物品も、安定的にまわってくるのかもしれません。それが羨ましいとかズルいとかでは全くなくて、そういう、俺の生きてるサラリーマン社会と違う世界、人脈で成り立っている世界があるんだろうな、という想像をしたという話です。リリー・フランキーという人は俺の考えるそういう人脈の世界の、かなり真ん中に近い場所に居る気がするという、なんかそういう妄想の話でした。

良いとか悪いとか、そういう話ではないです。